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ところどころ家族と手作りで。ただの「物」ではなく大切な「思い出」になった大満足の我が家。

  • 設立日:2021年月4日
  • 福井県三方上中郡若狭町末野:一階建建木造住宅

田んぼや神社が並ぶのどかな集落。色づき始めた山を背景に佇む、可愛らしい平屋のお家があります。ひし形の窓が縦に3つ並ぶ、お洒落な木造住宅です。
「大変な家づくりでした!とにかく塗り倒したっていう感じでした。」
このように語るのは今回の下嶋邸の施主である下嶋さんです。外では下嶋家の2人の娘さんが元気に走り回りながら遊ぶ声が聞こえてきます。

11月の少し肌寒い気候でしたが、下嶋家の中からはそんなことを忘れてしまいそうになるあたたかみと愛情が溢れていました。
そんな下嶋邸に木創の辻代表と地元ライターの僕とでお邪魔してきました!

家を建てることに悩んだ10年間

「どうも、どうも。」
柔らかい笑顔で挨拶してくださったのが今回の施主の下嶋さんです。

下嶋さんは若狭町で生まれ育ちました。辻代表とは幼稚園から中学校までずっと同級生でよく遊んでいたそうです。高校卒業後に上京され、現在の奥さんと出会い結婚。そして生まれ育ったこの地域に戻ってこられました。その後、「農業がやりたい!」と農業を始められました。

玄関から暖かな日差しのリビングが見えます。

「実は家を建てたいなと10年間悩んでいたんですよ。もともと住んでいた家をリフォームするということも考えていました。ずーっと嫁さんとああでもない、こうでもないって話してました。」
当時のことを振り返りながら、下嶋さんが本音を話してくださいました。
「実際にハウスメーカーや地元の工務店に見積もりを出してもらっていたのですが、なんかしっくりこなかったんですよね。」

悩んでいた下嶋さんが木創に新築を依頼しようと決心したのは、木創のオフィスに偶然訪れたことがきっかけだったそうです。もともとは同級生として少し恥ずかしいこともあり、依頼しようとは思っていなかったという下嶋さんですが・・・。

「オフィスに入った瞬間、自分もこんな家に住んでみたいなって思ったんです。」
それを聞いた辻代表が少し恥ずかしそうに笑います。下嶋邸では高い天井とシーリングファン、薪ストーブなど木創のオフィスで提案しているテイストが上手に取り入れられています。

キッチンから見たリビング。テレビボードの裏は扉の無い収納スペースです。極力壁や押入れを作らず、圧迫感の無い広々とした間取りにしました。キッチンの天井は利用した木材の余りを不規則なタイルのようにちりばめて遊んでいます。
手作りと思い出が随所にある家

実際にお家の中にお邪魔してみて、まず一番最初に感じたのが吹き抜けによる開放感です。あえて扉や押入れがないことですっきりとした風通しのよさを感じます。窓も大きく、日の光がリビングに差し込みます。気持ちよくて思わず背伸びをしたくなってしまいます。

「もう最高っす。それしかないです。」
下嶋さんの顔に大満足の表情が浮かびます。

でも、大満足な家づくりは実はなかなか難しいことなんだそうです。きっと初めて建てる家には沢山期待してしまうから、考えすぎてしまいそうですよね。どうすれば下嶋さんのように最高と言える家づくりができるのでしょうか?
木創が提案したのは、家づくりの基礎的な部分を木創が施工し、仕上げの部分を下嶋さんにしてもらうという方法です。もともと何かを作るのは好きだったという下嶋さんに、家づくり自体を積極的に楽しんでみてはどうかという提案でした。下嶋さんも最初は不安もあったそうですが、道具や塗料、木材などの材料を用意し、ときには一緒に作業するなど木創もサポートしながら作業がスタートしました。

【左】トイレの壁。最初に塗り始めたところはまだあまり上手に塗れませんでしたが、それはそれで味わいがあります。【右】本来なら複雑な作りの引き戸は吊り金具を使いシンプルに。こういったところで価格を抑える工夫をしました。「これで充分機能的です。」と下嶋さん。
思い出深い壁塗り、そして遊び心

作業の中で一番大変だったのが壁塗りです。下嶋邸の壁は全て漆喰の手塗りで仕上げられています。「最初はもう苦行っていう感じだったんですけど、どんどん上達していくのが楽しくなっていきました。」
不均一であるからこそ見える壁の表情からは手作りならではのぬくもりを感じます。

天井が高く、壁が白いこともあり開放的でとても明るく感じるリビングが家の中心です。窓からは薪割りやバーベキューができるお庭に出られます。

壁を塗ったのは下嶋さんとそのご家族だけではなく、農業の会社の仲間が休日に手伝いにきてくれることもあったそうです。
「みんなでワイワイ言いながらやってましたね。大変だったけど楽しい思い出になりました。今でも部屋に入って壁を見るたび、ここは誰が塗ったなぁって思い出せます。」
下嶋さんの楽しそうな表情から一緒に作業した家族や仲間への愛情を感じてしまいました。
リビングにはその仲間の一人からプレゼントしてもらった新築祝いの焼き物が並べられています。

仲間が作ってくれた焼き物。お家の形はこの下嶋さんの家と同じ形のミニチュア。人型や米俵は五穀豊穣の縁起が良いモチーフだそうです。

また、家のところどころに遊び心もあります。玄関の窓の形もただの四角形ではなく、一風変わったひし形にしました。まるでアニメーションで出てきそうな可愛らしい雰囲気があります。玄関先にはお子さんのお弁当を置くための小さなカウンターも設置されています。お洒落な街角のお弁当屋さんのようで、ここから嬉しそうにお弁当を受け取る娘さんの姿が目に浮かびます。利便性以外のところにも遊び心を感じ、家族が楽しく暮らしている姿が想像できます。

【左】キッチンと玄関の間にもうけたお弁当を渡す小窓です。【右】菱形に取り付けた玄関の窓。ただの四角い窓とは違ったリズムが生まれ、このお家の特徴にもなっています。
子供部屋にあるのは、下嶋さんが作ってあげたというかわいらしいキッチン。お子様たちがおままごとをして遊んでくれました。

そしてこの家のトレードマーク的な存在が薪ストーブです。実は下嶋さんが木創の初めてオフィスに訪れた際に一番心惹かれたのが薪ストーブだったそうです。
「みんな欲しくないですか!?」
嬉しそうに火を入れてくださる下嶋さん。薪ストーブの火は最初不規則なゆらめきでしたが、すぐに安定していき部屋全体をあたためてくれます。

家の断熱構造にこだわったこともあり、火を入れると家中とても暖か。「夜は大きい薪を放り込んでおけば、翌朝まで暖かいです。」と下嶋さん。
長く安心して暮らせる家にするための工夫

家族が長い間安心して暮らすためには、建てるときに気をつけないといけないポイントがあるそうです。 いくつかあるポイントの1つが外壁の素材です。常に雨風にさらされ、様々なストレスを受ける外壁は実はとても痛みやすく、メンテナンスの頻度が高い場所だそうです。そんな外壁によく使われるのは既製品の新建材ですが、今回、木創が外壁の素材として提案したのは杉材でした。

既製品は流行によっては廃盤になってしまう上、施工は難しく、長い目で見てコストが上がる可能性があります。それに比べ杉材はいつでもどこでも調達でき、加工が簡単で、場合によっては施主さんご自身で修繕することも可能な便利な素材です。
「メンテナンスもご自身でやってもらえる素材をご提案することで、より家に愛着を持ってもらえるのではっていう想いもありました。」と辻代表。
下嶋さんのように手作業が苦にならない施主さんの場合、痛んだ箇所の簡単な貼り変えや色塗りなどが自分でできると、長い目で見て安心です。このように、色々な工夫も交えながら、長く暮らせる家を考えていきます。

杉材を3色に塗り分け打ち付けたかわいい外壁です。
家という「物」ではなく、家という大切な「思い出」

「家ってやっぱり高価な買い物なので、妥協は仕方ないと思っていたのですが、断然思っていた以上の家を建てることできました。」
当時のことをひとつひとつ思い返して語ってくれた下嶋さん。その側には連れ添う奥さんの姿もありました。

「家を建てるというのは僕の夢でもあり、妻の夢でもありました。妻の意見もふんだんに取り入れながら、一緒に夢を叶えることができました。色々と苦労もさせましたが、喜ばせてあげられてよかったです。」

そんな奥さんに完成直後の印象に残っているエピソードをお聞きしました。
「お風呂ですね。新しいお風呂に入るのがなんか本当に入っていいんかなって思ってしまって。そしたら子供が『頑張ったご褒美だよ』って言ってくれて。大変なこともあったけれど頑張ってよかったって思いました。」

キッチンの上に秘密基地?!着脱可能な梯子で登るロフトのような部屋です。「子供は歳の数のステップまでしか登っちゃダメ。」というルールだそうです。

「『家は一度建てても満足できない』とよく言われてるんですけど、自分はもう一回でいいかなって思います(笑)。もう1軒建てるとしても同じもん建てます。」
「本当に〜!?」
恥ずかしそうな表情を浮かべながら下嶋さんにツッコミをいれる辻代表。その場は笑いに包まれました。きっと家づくりの作業中も、こんな笑顔に包まれた楽しい現場だったのではないでしょうか。

そんな手作りと愛情に溢れた下嶋邸には、心の中に感じる暖かさがありました。お話を聞いていると、ご自身も手を動かし、沢山の人の協力も得たお家だからこそ、大満足のお家になっているのだと感じます。
家族の想いをしっかり聞いて、自らも手を加えることで、ただの「物」ではなく世界でただ一つの大切な「思い出」のお家になった、下嶋さんのマイホームです。

取材中に「このお家好き?」と下嶋さんの娘さんお二人に聞いたところ、「うん!!」と元気な返事が返ってきました。その声がいつまでも心に残り、暖かな気持ちで満たされた帰りの車中でした。

お父さんが大好きな子供さん達の笑顔溢れる楽しい取材でした!
  • 文=菅原翔一
  • 写真=オザキマサキ
  • (文中敬称略)
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